インターネットのお仕事人辞典 トップページ > インターネットのお仕事人辞典(R) > ナビゲーター:矢萩秀明さん[ミュージシャン(ギタリスト)] > インタビュー
3.生き残る為に一つ一つが真剣勝負ですよ。

 

矢萩さん: 必ず下積みを通るんですよ、その当時のミュージシャンって。現場を通して恥をかきながら、知識とか、能力とか、技術をそこで学ぶんですよ。そこがね、要するに「学校」なんですね。だから、ネム音楽院を1年ちょっとで中退したけど、その1年間で学んだことっていうのは、結局その現場では何も役に立たなかったんです。後になって勉強したことの意味がだんだんわかってきましたけどね。

記: 真鍋さんが確か京都出身だったので、京都—大阪—神戸の大学の学園祭を、ツアーみたいな形で、バンドでまわりましたね。ライブ活動を始めたんです。2年ぐらいそういう仕事をしていて、その後バンドが解散になってぶらぶらしてたんですよ、本職もなく。 そしたらネム音(ネム音楽院)の時の同級生で、ドラムをやっている宮崎さん(彼はすでにその時すでにバックバンドとしてプロ活動を始めてました)から、ある日電話がかかってきたんです。「矢萩、今時間あるか?ギター担いで渋谷に来い!」って。当時、渋谷に"エピキュラス"っていうYAMAHAのスタジオがあったんですけど、そこへとにかく行きました。何だかわからないんだけど、とにかくギター持ってこい、と。しぶしぶ行ったんですよ。行ってみたら、オーディションやってたんです。なんか恐い顔した人達がいっぱい居て「入りにくいなぁ」なんて思ったんだけど、「おー、矢萩、来い来い来いっ・弾け!」「え?弾くのぉ?」「いいから弾け!」って(笑)。それで、何曲か弾いたんです。そしたら、その歌手とバンドの人達と何人かの人達が集まって、ごしょごしょごしょごしょ‥‥チラッて(笑)。「嫌な感じだなぁ」とか思っていたんですけど、合格しちゃったんです。

矢萩さん: 何のオーディションだったんですか?

記: それはね、浜田良美さんっていうYAMAHAの世界の歌謡祭で第1回グランプリをとった人がいて、後から聞いたら、その人のバックバンドのギタリストを選ぶオーディションだったんですよ。そこでバックバンドの仕事に初めて就いたんです。

記: その時は何歳ですか?

矢萩さん: 19歳。 そこで初めてバックミュージシャン達の世界に入りました。スタジオミュージシャンだとか、そういうサポートミュージシャン達との付き合いが始まって、知り合いが増えていくわけですよ。そうしたらある日、浜田良美さんのバンドでキーボードを担当している信田さんっていう先生が、初めて僕にレコーディングの仕事を紹介をしてくれたんです。 BGMの録音の仕事でしたね。3時間くらいのセッションかな、その間に、10何曲くらい次々と録っていくんです。みんな譜面を初見でバリバリ弾く人達なんで、演奏があっという間に出来ちゃうんですよ。そこに、僕が連れてかれたと(笑)。ギターはベテランの人が1人いるんです。僕は、「リズムギターをやればいいから。コードを刻んでるだけでいいから、簡単な仕事だよ」って言われて、連れていかれたんですね。それで、ギターの人を紹介されて、「どうも、矢萩といいます。初めてなのでよろしくお願いします」って言ったら「君若いねぇ、じゃあ‥‥ロックは‥‥君みたいな若い人の方がいいよね!交換しようっ!」って(笑)、譜面を変えられたんですよ!「君がリードね。僕、楽させてね」って言って。つまり僕は、メロディ弾いたり、アドリブする役になったわけです。譜面をバッと広げたらもう真っ黒なんですよ!コピーの譜面だから、メロディもソロも全部、本物のやつを書きとめたものですよ。ガビーンッと(笑)。

‥‥何曲かはいけたんですけどね。忘れもしない、クイーンの『ボヘミアン・ラプソディー』という曲。ギターソロがすっごく難しいんですよ。「凄いのが出てきちゃったなぁ・・・」と思っていました。でもすぐに始まりますからね。テーマとかは、なんとなく弾けるんですけど、肝心のギターソロの時に、「はい、ギターソロ!」って、指揮者がピュッってやるわけなんですけど、弾けないんですよ。ボロボロになって、その先へ進めない状態ですね。 その当時は"一発録り"といって、いっぺんに録ってるんです。だから、一人が間違えると、全部やり直しなんです。だから、僕が間違えるとそこで止まってしまうんですね。「はい、やめやめー。どうしたの、ギターさん?」「あ、すいません。ちょっと時間を下さい・・・」。必死で読むんですよ。でも、もう頭にカーっと血が上って真っ赤になっているので、余計読めないんです。でも、ずっとは待ってくれないから「じゃ、いきましょう」って始まってしまいますよね。それでもギターソロになると止まっちゃうんですよ。それを2回か3回くらいやったら、みんな怒り出して、「はい、じゃあ君だけ練習!テンポを遅くするから。このぐらい」っていう感じで、スタジオミュージシャンが並んでいる中で一人だけ練習させられました。余計弾けなくなるんですよ。恥ずかしいやら悔しいやら情けないやらでね。逃げたい気持ち。泣きたい気持ち。 さすがに、そのベテランのギターの人が見るに見かねて、「じゃあ戻そう」って戻してくれたんです。「君はコード弾いて。僕がやるから」って。そしたらその人は、ふっと譜面を一瞥して、「やりましょう!」って言うんですよ。「え?こんな難しいのに練習しなくていいのかな」って思ったの。それを一発で弾くんですよ!!「これがプロなのか」と、すごくショックでした。終わってから、一人一人ギャラをもらって帰るんですけど、なんか貰いにくくて‥‥。 ギタリストなんて、掃いて捨てる程いるから、僕じゃなくたっていいんですよ。腕の良い人だったら、一発で決めるでしょ?僕だったら、そんなかんじで時間もかかるし‥‥もしかしたら、弾けないかもしれない。そしたら、多少ギャラが高くてもうまい人呼んだ方が、最終的には安上がりなんです。僕が1時間、2時間かかって弾くものを、ベテランだったら一発で、4~5分で弾くわけですからね。だからそういう人には二度と声がかからないんですよ。そこで、ひとつ切れたわけです。そういう世界なんですよ。生き残る為に一つ一つが真剣勝負ですよ。

記: 苦しい事ばかりで、楽しい事はなかったんですか?

矢萩さん: 多分、音楽やってる人が全てそうだと思うけど、楽器を弾くこと自体が、楽しい事なんですよ。音楽をやっているという、その行為自体が楽しい。だから、続けられていると思うんだけど、たとえば、演歌の仕事をやると「演歌なんかじゃつまんないでしょ」って言う人もいるけど、それはそれで楽しいんですよね。とにかく、ギターを弾くのが好きなんです。だから、何だっていいんです。たいていのミュージシャンは、「練習したー」っていう気持ちがないですよ。好きだから弾いてるわけでしょ?好きだから、工夫したり、好きだから、知らない事をできるようにしよう、とかしているわけで、それは別に練習じゃないんですよ。それは、楽しいギターと一緒に過ごした時間なんです。だから、練習したって意識は全然ないんです。よく、インタビューなんかで上手いミュージシャンに「練習しましたか?」って聞くと、「全然していない」って言うけど、練習しないで弾けるわけないんですよ、ギターって。特殊な楽器だからね。ただ、練習したっていう意識がないんですね。

 
インタビューの感想
記事を読んだら、感想を送ろう!!(ぜひ、お聞かせください)
学生記者の感想

もっと調べる
矢萩秀明さんの本があるか調べる

他のナビゲーターを探す
フリーワードで探す
全ナビゲーター一覧
もっと詳しく探す

キャリナビ・インタビュー本

購入する
出版への思いを読む

購入する
代表の前書きを読む

キャリナビ・心に響いた
オンリーワン・ワード集

購入する
詳しく見る