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7.使命感や、哲学を持った人がどんどん増えていって欲しい

 

記: 矢萩さんにとって音楽とは?

矢萩さん: 僕にとっての音楽とは"道具"であり"武器"なんですよ。音楽は、ストレートに耳から脳に到達するでしょ。心までいっちゃうんですよ。これはすごい強い"武器"ですよね。たとえば、独裁者がいてね、その人が「お前達今から楽しそうに笑え!」「拍手して、とにかく楽しそうにしろ。歓声をあげろ!」って言っても、恐くてそれに従う人もいるだろうけど、心は歓喜していないわけですよね。嫌々、しょうがないと思いながら、身体は従っても、心は従わない。だから、本当の意味では、その人がいくら権力とかで命令したとしても、人は動かないんですよね。ところが、音楽家になって、大ヒット曲があって、コンサートを開いて、その人が、「イエェーーーイ!!」って言えば、みんな「イエェーーーーイ!!!」って言うわけじゃないですか。別に笑えって言わなくても、楽しい話をすれば、「うわ~!」って楽しく笑って、何千人何万人の人が一斉ににそういう事するわけでしょ。命令していないのに。これはすごい力ですよ。音楽の力ってすごいですよ。だから多分、トップに上り詰めた人達は、その力を手に入れたことになるんですよ。スーパースターになった人達は、自分以外の人達を自由に操る力を手に入れたようなものです。

その力っていうのは凄い力だけど、下手をしたら、さっき言った独裁者の様に、良くも悪くも使える力ですよね。それを自分の欲の為に使おうと思えば独裁者になってしまうし、みんなの幸せの為に使おうと思えば指導者になりうるでしょ、良い意味での。音楽はそれくらいの力を持っているんです。だから、音楽は僕にとって"武器"になるかな、と思うんですよ。 ご近所の疲れているおばさんの前で、その人が好きな曲を演奏してあげたら、少しはその人の心が軽くなるわけでしょ。それって、実は凄く大事なことだと思うんですよ。そういう事を僕は音楽でしかできないので。それが"武器"なんです。"道具"であり"武器"である。

記: 音楽家を志す人達に何かメッセージをお願いします。

矢萩さん: 何の為にやるのかっていう事を、その場ですぐに答えは出なくてもいいから、ずっと求めてて欲しいな。 中学生、高校生とか、反抗期にある子たちにとって、体制側に対する批判っていうのはすごくウケるよね。たとえば、先生達への批判っていうのは、すごくウケるわけでしょ。ウケたいが為にあえてそれをやる、つまり売る手段として、先生を誹謗中傷するような歌詞を作るとか。でも、「それっていいんだろうか?」って考えてほしいんです。中にはそう言われてもしょうがない先生もいるかもしれないけど、そうじゃない先生だっている。それなのに、自分が「売れたい」っていうことだけで、もしそういう手段をとるとしたら、それはいいのだろうか?

「何の為に音楽をやるのか」という事を突き詰めていかないと、そういったことが平気でできちゃうミュージシャンが現れるんです。要するに、欲の為にだったらできてしまいますよね。売れればいいんですから。そういう人にはミュージシャンにはなって欲しくないですね。 ミュージシャンっていうのは、文化の中の音楽っていうジャンルで、音楽活動を推し進めていく事によって、社会の平和を求めていく人達だと思うんです。そうじゃない人達はミュージシャンじゃないと僕は思うんです。常に聖人君子のような歌詞を書け、なんていうことじゃないですし、表現としては色んな表現があっていいと思うんです。ただ、その心ですよね。目指すところが狂っていると、よくないんじゃないかなって思っているんです。

記: どんな音楽をこれから伝えていきたいと思っていますか?

矢萩さん: 若い人だけではなくて、周りのおじちゃん、おばちゃんとかが聴いても楽しめるような、それでいて主張もあり、一般にアピールする力もある音楽を作っていきたいと思っているんです。ちょっと抽象的でしたね。 ただ、ミュージシャンの中のみんながそういう風に考えているわけではないんです。現状は"欲"を追い求めている人もいっぱいいるので。どっちかっていうと、ミュージシャンはちゃらんぽらんなイメージがあるんじゃないかと思うんですけど、実際そういう人は多いんですよ。その日暮らしっていうか、その場が楽しければいいっていう、フィーリングだけで生きている人が、いっぱいいますよ。自分のことが一番大事で、欲が強すぎちゃう人やセーブが利かない人とか、ちょっと常識から逸脱した行動をとる人っていっぱいいますからね。ミュージシャンって普通から比べたら派手な性格な人が多いですからね。はめ外す事も多いし、バカな事やりますよ(笑)。その中で、さっき言ったような話はなかなかできないんですよ。「何の為にやるの?」って言ったって、「楽しいから」「やりたいから」って言うだけで。哲学を持った人だとか、使命感を持った人なんてなかなかいないんです。何人かはいますけど。そうした人達とは交流を深めています。

記: やはりその使命感や、哲学を持った人がどんどん増えていったらいいですね。

矢萩さん: 増えていって欲しいですね。

記: 長い間ありがとうございました。

矢萩さん: お役に立てれば、嬉しいです。

取材後に矢萩さんが、取材時には言いきれず、どうしても伝えておきたいことがある、とお寄せいただいたメッセージです。

人は誰でも、どんな人にも必ず使命がある。 私を待っている人が一人でもいれば、私がギターを弾く意味もあるのです。

「『人は誰でも、どんな人にも必ず使命がある』。これは生徒に対して、よくこのように話すのですが、同時に自分に対して言っていることでもあります。

初めは誰しも憧れや欲が原動力になって音楽を始めます。初めはそれで良いのですが、成長していくうちにだんだんと、「何のために音楽をするのか」ということが大きな問題になってきます。現実の社会は厳しいものです。毎日の生活との戦いの中で、自分の夢も希望も押しつぶされそうになってしまいます。現実と理想のはざまで悶え苦しむことになります。「こんなに苦しい思いをしながらミュ−ジシャンを続ける意味があるのだろうか?」「ギタリストなど五万といる。自分がギターを弾く意味がどこにある?」そう考えると気力は萎え、もうギターをやめてしまおうかと考えてしまいます。ですから、「何のために」を見つけなければ、もう一歩も前へ進めません。

そんな時に必ず思いおこすのが、私の師匠の池田先生がおっしゃっていた「どんな人にも必ず使命がある」という言葉です。

どんな音楽を聴いて感動するかは、まったく人それぞれです。同じ音楽を聴いても、ある人は感動し、ある人はまったく何も感じない、ということはよくあることです。これを逆に捉えれば「私のギター、私の音楽でなければ救われない人がいる」と言うことです。その人は、自分では気付いていなくても、心の奥底で私の音楽に出会えるのを待ち望んでいます。私の音楽に出会った時に、なぜか、心から安堵し、涙が出、癒され、さらに命がよみがえり、希望がわいてくるのです。そう言う人がこの世界の中に必ずいます。世界の中でたった一人かもしれませんが、必ずいます。私を待っている人が一人でもいれば、私がギターを弾く意味もあるのです。その一人のために。

私はその一人のために、技術を磨き、創作し、人間的にも成長しなければなりません。また、早くその人の前に現れ、音楽を聴かせてあげなければなりません。

私の目の前にいる大勢のお客さんの中の一人がその人かも知れません。

私の目の前にいる生徒の中の一人がその人かも知れません。

私が一日の中で会った多くの人の中の一人がその人かも知れません。

私は戦争に反対します。その大切な一人が殺されるかもしれないから。

ですから、私には使命があるのです。だから頑張れます。

音楽家と言うのは職業を言うのではなく、生き方を言うのです」。

 
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