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6.ただの趣味やボランティアではいやだと思っている

 

新しいことへの挑戦は、そこに沢山の仲間を生みます。

記: いま日本ではスポーツをする場も限られてきていますよね。

辻さん: 僕が今つくっている「エミネクラブ」というものがあって、誰もが参加できるバスケットの場です。いま日本では部活に入らない限りバスケットはできないんです。例えば、中学生で『スラムダンク』を読んでバスケットをやりたい子は沢山いるのに、部活に入ってうまくないと殴られるし試合にも出られない。勉強もやりにくい。週に2日塾に行きたいんだけれど、週1日バスケットできますかなんて許されないし、大学も体育会しかない。同好会だと試合をするか、だいたいみんなで飲みに行くしかしない。そうではなくて、"バスケットそのものを楽しめる場"を提供しています。月に2回体育館をとって誰でも参加していいですよと言って、女の子から中学生、高校生、トップ選手みんなでスポーツをします。彼ら子どもたちとこんなトップの選手とが一緒にやれる機会はないし、みんなで楽しんでやっています。

この間、そのエミネクラブに耳の不自由な人が来ました。彼は高校まで耳の不自由な人の学校でバスケットをやっていましたが、社会人になるとなかなかそういう人が集まってやる所がないし、もっとうまくなりたいと言ってね。エミネクロスなら誰が来ても受け入れてくれるし、バスケットのトップの人たちもいる。コーチも沢山いるから是非一緒にやりたいということで、この間一緒にやっていたんです。僕の考え方もとてもよく理解してくれて、今度子どもたちに手話を教えたいと言っていました。だから今考えているのはもう一つ、耳の不自由な人たちのバスケットボールチームをつくろうと思っています。車椅子の人たちは「パラリンピック」を目指しているけれど、「デフリンピック」という耳の不自由な人たちのオリンピックがあるんです。その「デフリンピック」の日本代表になりたいと言っているから、彼らと一緒に"Rough"というチームをやっていくつもりです。トップの選手のチームが"Excellence"。これは"strike for excellence" と言って、オンリーワンをめざすという意味です。車椅子のチームは"No excuse"で、言い訳しないという意味です。つまり障害を言い訳しない、人のせいにしない。 耳の不自由な人のチームは"Rough"で、荒々しいという意味。宝石の原石のように今は荒々しいけれども、磨けば磨くほど素晴らしくなるということです。僕は言葉を大事にしているから言葉にも意味を持たせたいと思っています。

記: 今後、医療についても幅が広がってくるのでしょうか。

辻さん: 僕はもっと医療の枠を広げて考えるべきだと思います。いま僕の仕事全体の中で、本当に医師免許証がないとできないことはどこまでなのかと言われると、すごく少ないことに気づきます。でも僕はすべてを医療だと思っています。厚生省が定める医師免許証の医療の範囲が現在の言われている医療であって、僕が認める医療の範囲はもっと広がります。医学部へ行きたいと思っている学生たちが僕のような医療をやりたいと言って、いま沢山メールを寄こしています。ただ僕と完全に同じようなことができるというわけではないから、手段が色々あって自分ができること、自分に合っているものを選べばいいんです。でも、僕の考え方を理解してくれて医者の免許を持ち、病院の白衣を着ることだけに拘らない、もっと自由な発想を持つ、僕の後継者みたいな人はほしいですよ。まだいないんですけどね。だって家族の理解もいるし、お金になるのが難しいのは確かですからね。普通にお医者さんをしていればそれなりに暮らせるけれど、僕みたいにエミネクロスをやっていると正直厳しいです(笑)。

しかし、僕はいま徐々に、これをただの趣味だとかボランティアではいやだと思っています。これが立派な仕事になれば優秀な人材も来ます。だからいま僕は苦しいけれど、頑張って確立したい。子どもたちのスポーツ塾でもちゃんとお金を取っています。例えばそれを「営利目的じゃないですか。」と言う人もいます。でも病院で手術するのにお金を払うでしょう。それは営利目的でお金をもらっているわけではないけれど、ちゃんとお金をもらうでしょう。学校も営利目的じゃないけれど授業料をもらう。僕のスポーツや医療だってきちんとした医療なんだから、これにもきちんとお金を払ってほしいんです。これまでは子どもたちのスポーツ教室や、スポーツのサークルというのはほとんどボランティアくらいでやっています。それでは、僕は"スポーツの社会的価値"は上がらないと思っています。僕はこれを「仕事ですよ」と言ってきちんとお金をもらいたい。

最近はやっと企業でこの理念に賛同して下さるところが出てき始めました。例えば、日本全国を回って子どもたちの"生きる力"を育てるバスケットボールのキャンプに企業が共感してくれています。僕は"理念共有型のスポーツワールド"だからこそ、理念を企業にもバックアップしてもらい、一緒にやっていきたいと思っています。今までの企業の考え方はいわゆるコマーシャルのスポンサーだけだったけれども、そうではなくて、社会貢献として理念を一緒に共有していきたい。理念が先にあって、お金を出す場合もあるし、労働を提供してくれる場合もある。多様な形でいいからとにかく僕の理念に賛同してもらいたいんです。例えば、色々なところから「生きる力」の総合学習授業に呼んでいただきます。そんな子どもたちの所に行った時に車椅子が足りません。子どもたちが学校に行くと100人くらいで、10台しかないから1回に10人しか車椅子バスケを体験できません。もっと車椅子を提供してもらって活動に賛同してくれる企業がいれば、もっともっと子どもたちに本当のスポーツを見せられる。月に一回体験教室というのをやっているので興味があれば是非来て下さい。

現在僕の所には様々な競技で、それこそ日本のトップの選手たちが沢山来てくれています。そこで考えていることは、彼らの協力を得て子どもたちのスポーツ塾の競技をもっと広げていきたいということです。今僕が長い間サポートしてきて、オリンピックにも2回出場しているプロスキーヤーの平沢岳君も、今年引退して「辻先生と組んでスキーでスポーツの素晴らしさを伝えていきたい。」と言っています。僕としてはエリアの拡大ともに、競技の拡大をめざしたい。今度サッカーでも僕と同じことをやりたいと言っている人が出てきています。2月にサッカーで子どもたちを集めて、僕の考え方を共有している元Jリーグ選手の外国人サッカーの指導者を呼び、サッカーでも初めてキャンプをやります。もうそうすると、どんどん競技を広げていけば新たな日本体育協会、"辻スポーツワールド"がつくれるのではないかとワクワクします。しかし、形だけではいやなので、やはり理念をしっかり浸透させることを大事にしなければなりません。だからすごくこだわりはありますし、大変な覚悟がいると思います。

 
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