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記: 開業までの準備は順調でしたか。 飯田さん: 時間はいっぱいあるはずなのに、最後の方はぎりぎりになるというのは世の常みたいで、オープン直前にいろいろ行き詰まってきました。細かい準備が全然できていなかったんです。さぁ大変だという時に、友達がたくさん手伝いに来てくれました。それも、会社の同僚や大学の友達ではなくて、ユーラシア旅行をした前後に知り合ったバイクの友達が東京の方からも駆けつけてくれたんです。オープン前日から2日目くらいまでに出来ていない所を一気にやってくれました。海外をバイクで走る人は、バイタリティーがあるというか、結構変わった人が多くて、手伝ってくれた友達もみんなそれぞれ一芸を持っていました。一人は元電気屋さんで、電気関係は完璧なので、ビルの配線をやってくれたり、掃除していなかったエアコンを、業者さんのようにスチームクリーナーで洗浄してくれました。ニューヨークにずっと住んでいた人は、英語の注意書きとか一日で全部作ってくれました。一人は、シスアド(コンピューターで情報システムを管理する専門家)をしていて、コンピューター関係すごく得意なので、パソコンをLANで繋いだり、不特定多数の人が使うから、インターネットのセキュリティー関係を全部やってくれました。一人はイラストが得意で、いろいろ描いてくれたりとかしました。こんな風に、偶然みんなそれぞれはまる仕事があったんです。高校の時の友達も来てくれて、ディスカウントショップで安く買った汚れた椅子をきれいに磨いてくれました。それぞれみんなが利害関係なしに協力してくれて、すごくありがたかったですよ。 記: 素敵ですね。手伝いにきてくれたバイクの友達は飯田さんが旅行されたときに知り合ったのですか。 飯田さん: いえ、海外を走るライダーがよくアクセスするホームページの掲示板にいろいろ質問したことがきっかけです。時々メールのやりとりをするくらいで、海外を一周した時に実際出会ったのは一人もいません。でも宿をやることになって、今までメールのみでやり取りしていた人たちが実際に来てくれるようになったんです。今でも、近くの友達は週一回くらい手伝いにきてくれます。インターネットは、匿名でなんでもできるし顔が見えないけれど、僕の場合は普通に知り合うきっかけになりました。 記: オープンして三ヶ月が経ちますが、今どんなお気持ちですか。 飯田さん: 楽しいです!この仕事やってよかったなぁって思います。まだ三ヶ月だから、何とも言えないかもしれないけれど、会社員で働いている時よりもずっと面白いです。自分の興味のあることをやるって一番でしょ。今、結局38歳だけど、35、6年かけて、自分に向いていて、やりたいと思える仕事がやっと見つかったという感じです。本当にいい仕事を見つけたなと思います。個人商店に近くて、全部自分一人でやらないといけないけれど、逆に言ったら全部が一人でできますから。営業もしないといけないし、会計も、接客も掃除もしないといけない、全ての要素があります。あとコンピューター関係もわかってなくてはいけないです。やっぱり自分でできるということは面白いです。
記: 今はホステル経営をされていますが、飯田さんの小さい頃の夢は何でしたか。 飯田さん: 小さい頃は仮面ライダーになりたかったですけどね(笑)。僕は小さい頃から野球小僧で大学までずっと野球をやっていました。中学校になるまではやっぱり野球選手になりたかったです。でも中学になると、自分のセンスが分かってくるから「無理やなぁ。」と思うようになりました。別にこれになりたいっていう職業は何もなかったです。 記: 大学では何を勉強されたんですか。 飯田さん: 社会学部に入って社会福祉関係の勉強をしました。ケースワーカーやカウンセラーに興味がありました。週に2、3回アルバイトで自閉症の子のケアをしていました。でも、世話をする立場なのに苛立ってしまうし、自分の性格には向いていないと思いました。就職活動をしていて、やりたいと思ったこともいろいろあったけれど、絶対になりたいというものはありませんでした。これが絶対にやりたいって思ったのは今回が初めてです。だからこそ前に進むエネルギーがガッと出たんです。やりたいことをやっていると、一見大変そうなことも苦でなくなります。例えば、宿の設計をちょっと失敗して、建物の一階はお湯が出ません。普通の生活をしていて、真冬すごく冷たい水に長時間手をつけていたら辛いと思うけど、今はそんなに苦労とは思いません。トイレ掃除も、宿をやる前は絶対に嫌だったけれど、今はできます。特に苦痛ではないし、むしろ毎日綺麗に保てるということがちょっと楽しいです。夜中の3時頃まで、訪ねてきてくれた友達と話をしていて、最初のチェックアウトが早朝の5時半で2時間くらいしか寝ない時も、いやいや起きるという感じではないです。自分が経営する宿だから絶対失敗させられないという気持ちもありますが、嫌にならないのはやる気があるからです。 |