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2.現代の子どもは褒められていない

 

記: はじめに、スポーツの家庭教師を始めようとしたきっかけはなんだったのですか。

水口さん: 私が体育大学の学生時代に、声を掛けられたアルバイトがきっかけです。知りあいに「息子が、体育で逆上がりのテストがあるのに出来ないから、少し教えてくれませんか。」と頼まれたのです。テストまで1週間の練習だったのですが、その息子さんは逆上がりが出来るようになりました。できるようになったことを息子さんとご両親が共に喜んでくれて、お友達に私の事を紹介してくれました。こんな感じで、少しずつ体育の家庭教師の依頼が増えていきました。

記: アルバイトとして行っていた体育の家庭教師で起業することは、リスクが高くなってくると思うのですが不安はなかったのですか。

水口さん: 学生時代も生活費を稼がなくてはいけないという条件がありました。会社を設立してから3年がたったのですが、そこまでの5年間に何度も辞めようと思いました。体育の家庭教師は自分に合っている仕事なのか。このままで生活していけるのだろうか。将来体育の家庭教師を続けていけるのだろうかという自分自身の葛藤がありました。生徒はいても、その状況に満足するのではなく先を見て、「なんで自分はここまでしか出来ないのだろう。」と思う事がよくありました。

記: その苦しい状況の中でも起業しようと考え抜けた要因はなんでしょうか。

水口さん: やはり子ども達のためにという思いがありました。子ども自身が成長できた、競技を出来るようになった時の喜んだ顔ですね。子どもならではの明るさや元気は、自分の仕事を続ける上での葛藤を乗り越えられる一因になりました。

記: 「子どものために」とおっしゃっていましたが、そこに「自分のため」というのは入っていないのですか。仕事を「人のため」だけでやるのは難しいのではないでしょうか。

水口さん: 最初、体育の家庭教師という仕事で食べていけるのかという思いもありました。だから「人のため」という事を何よりも第一に考えられた訳ではありません。仕事として考えるには、お金の流れを考えなければいけないと思います。自分のことだけを考えるとお金の流れも変わってしまいます。学生時代から「子どものため」にやっていることによって何かの形に変わって自分に帰ってくる面がありました。 もちろん、見返りを期待してはいけません。皆さんが今行っているキャリナビの活動でも、若者のためにと取材を行っていることが結果的に自分達に帰ってくる物も多いと思うのです。

記: 自分に合っている仕事なのか悩んだとおっしゃっていましたが、スポーツの家庭教師で起業しようと思った決め手は何だったのでしょうか。

水口さん: 頭だけで考えても難しいです。実際現場に行ってやってみることで、その仕事にあっているかあっていないか、やりたいかやりたくないかを感じる事ができます。より多く社会に関わっていって、自分で感じる事が大切だと思います。私は早い段階でタイミングを掴む事が出来ました。自分の使命などと勝手に思っているところもあります。

体育の家庭教師として子どもと接していく中で、今の子ども達が口に出さないで感じている心の悩みと、私が子どもの時感じてきた事で一致している部分がありました。そういう部分に対して、早い段階で悩みなどを理解して共有する事ができれば、子どもたちの苦しみも少なくなると思います。また、その子が成長した時にも、自分の夢や目標に向かって何があっても最後までやり遂げるという姿勢を、1つの競技ができるようになるプロセスを通してつくれるのではないかという考えもありました。

記: 子どもの良い部分を見つけるコツなどありますか。

水口さん: 一度会って、話しただけではわからないです。時間をかけて、ちょっとした言葉や仕草を見ています。例えば、公園で指導をしている時に、セミが地面に落ちて苦しそうに羽根をばたつかせていました。セミを見過ごさないで、木に戻している子どもがいました。生き物を大切にする優しい心があるのを知りながら、わざと「どうしてセミを木に戻したの?」と質問をします 。「ここにいたらみんなに踏まれちゃうから木に戻すんだ。」そういう心を言葉にかえさせる。そこで、「優しいね。」と褒めます。さらに「みんなにもそういう風に優しく接すると良いよね。」と伝えます。これはお互いに気持ちが良いです。子ども自身は自分を優しいとは思っていなかったけれど、先生に「優しいね。」と言われることによって嬉しいという思いがあります。そして客観的に「周りにやさしくできる自分」を発見するきっかけに繋がります。このような些細なチャンスを見過ごさないようにしています。ただボーッと子どもと一緒にいるのではなく、子どもの一言一言に耳を傾けていることが大切だと思います。

記: 水口さんは褒めて良い部分を伸ばす形の指導をしていらっしゃるのですか。

水口さん: 褒める事が一番大切だと感じています。現代の子どもは周囲から褒められていないです。子どもたちは「よく出来たね。」「よく頑張ったね。」と言ってもらえる機会が少ない気がするのです。子どもを褒めるとすごくニコニコして目がキラキラしてきます。恥ずかしがり屋の子どもは目を伏せているだけの事もありますが、褒めてもらって嬉しい気持ちはみんな変わらないと思います。褒めるという事は心の底から相手を認める気持ちで接する事が必要だと思います。

 
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