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債権譲渡禁止特約の呪縛

工事請負や生産受注等では「債権譲渡禁止特約」を明記した契約が少なくありません。
読んで字の如く、債権(=売掛金)の譲渡を禁止したもので、ファクタリング会社が特約の存在を知りながら売掛金買取を行うと、最悪の場合"譲渡無効"とみなされ多大な損失を被るリスクがあります。

債権譲渡禁止特約の解説図

現時点(2019/1)ではこの債権譲渡禁止特約が絶対的な力を持つため、ファクタリング会社も"特約付きの売掛金"には手出しできず、利用者側としては「売りたくても売れない」という不都合が生じています。

譲渡禁止を謳う背景には「支払先が煩雑になることを避けたい」「譲渡先の信憑性確認ができない(反社会的勢力に譲渡された場合、コンプライアンスに影響する)」という債務者側の事情があり、大手企業を中心に特約をつけたがる傾向があります。

120年ぶりの民法改正で何が変わる?

120年ぶりに改正された民法

2017年5月に120年ぶりとなる民法の大幅改正が行われ、2020年4月1日から施行されます。
中でもファクタリングと関連するのは「466条(債権の譲渡性)」で、次の通り改正が行われます。

民法466条(債権の譲渡性)の改正点

改正前

、債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
、前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

改正後

、債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
、当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
、前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
、前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

民法第466条(Wikibooks)より引用

1項について

1項に変更は無く、債権は原則譲渡可能という内容です。

2項について

改正前は"反対の意思表示"があれば債権の譲渡は無効になる旨が記載されていましたが、改正後は内容が180°変わり「債権の譲渡が禁止・制限されていたとしても、債権譲渡は成立する」とされ、債権譲渡禁止特約は無効であることが明記されました。
ここが当該改正最大のポイントになります。

民法466条2項の解説図
3項について

改正であらたに加えられた項目です。
2項により債権譲渡禁止特約の有無に関わらず自由に譲渡できることが謳われていますが、債務者が譲渡の事実を知らなかった場合に限り、譲受人(譲渡先)への支払いを拒否し、当初の譲渡人(債権者)へ支払うことで対抗できます。

冒頭で触れたように「支払先がコロコロ変わり経理処理が煩雑になる」「反社会的勢力やそれに類する者へ譲渡され、コンプライアンス上取引できない」といった債権者側の懸念を払拭する目的で追記されたと推察できます。

民法466条3項の解説図
4項について

3項に対する例外規定となります。
万が一、債務者からの支払いが予定通りに行われなかった場合は、まず譲渡人(当初の債権者)から債務者へ催促を行います。
それでも支払いに応じない場合には、譲受人から直接債務者へ支払いを求めることができるとされています。

民法466条4項の解説図

ファクタリングにおける民法改正の影響

2017/5に参議院本会議にて可決された民法改正

債権譲渡禁止特約の扱いについて、民法改正(2020年4月〜)でガラッと変わることをご理解いただけたと思います。
ではファクタリングにおいて具体的にどのような影響があるのでしょうか。

債権譲渡禁止特約つきでも買取可能に!

現行法では債権譲渡の事実が無効になるリスクがあるため、ファクタリング会社は債権譲渡禁止特約つき売掛金の買取には消極的です。

しかし、新債権法が施行されれば特約の有無に関わらず債権譲渡の効力が保証されるため、ファクタリング会社側は債権譲渡特約が存在しても安心して売掛金を買取ることができます。

ただし、民法466条3項に記載があるとおり債務者(取引先会社)は譲受人であるファクタリング会社への直接支払いを拒む権利があるため、売上金回収は「取引先→利用者→ファクタリング会社」のフローとなり、実務上は従来の2社間取引と同様に処理されるものと思われます。

ファクタリングの自由度が増す

企業規模が大きくなるほど債権譲渡に制限を設けているケースが多く、債権譲渡禁止特約はファクタリングの大きな足跡となっていました。
民法改正はファクタリング業界にとって転機となり、より一層の普及を促すものと考えています。

例えば、クレジットカード売上(クレジットカード会社に有する債権)は譲渡が禁止されていたため、買取不可でしたが法改正によりこのような債権もファクタリング可能となることが期待できます。