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政府が債権活用を推奨する理由とは

経済産業省の入口

経済産業省が発表した「中小企業における資金調達の課題」では、日本の流動資産利用率は米国に比べて圧倒的に低いと述べられています。

そのため、経済産業省では「売掛金・未収金を活用した資金調達の活性化」を大きな課題として掲げています。
経済産業省が債権活用を推奨する理由は以下の通りです。

巨大な売掛債権規模

国内中小企業が保有する売掛金は2020年時点で80兆円前後、担保不動産の総額も90兆円前後と同等規模です。
しかし、融資担保として利用されている売掛債権は全体の0.6%に過ぎず、資金調達手段として殆ど周知・利用されていないというのが現状です。

米国では全体の15%近くが証券化され、ファクタリングなどが一般的なファイナンス手段として利用されているのに対し、日本では僅か1.7%に留まっているということになります。
国家予算にも匹敵する売掛金が有効活用されないまま宙に浮いている状態は、余りに非効率ではないかというのが経済産業省の見解です。

売掛債権規模の円グラフ

低迷する不動産価値

現在、中小企業融資の9割は不動産を担保に入れた契約となっていますが、その一方で不動産価値は年々低下の一途を辿っています。
また、不動産は時間の経過と共に価値が下がってゆくのが一般的ですし、そもそも不動産を保有していない中小企業は利用することができません。

そこで不動産以外の資産を活用したキャッシュ確保手段の1つとして、売掛金を活用した「ABL(債権担保融資)」「ファクタリング」が注目されています。

金融機関の審査問題

レポートの中では、金融機関の「審査」に対しても言及しています。

  • 大手企業の巨額融資に比べ審査コストに対するリターンが薄い
  • 会計監査や情報公開が義務付けられていない中小は検討材料が少ない
  • 保証能力が低く、経営状況も外的要因に左右されやすい

などがネックとなり、貸し渋りの傾向が顕著に表れています。

また、これらはABL(債権担保融資)を利用する際の審査でも見られる傾向です。
財務状況が芳しくない中小企業の場合は信用を得ることが難しく、仮に担保価値が証明できたとしても審査に落ちてしまう可能性があります。

このような背景もあり、財務状況が芳しくない・担保を持たない中小企業はファクタリングを優先して利用していると考えます。

債権を活用するための環境整備

債権活用と聞いても多くの方がピンと来ないのではないでしょうか。
それどころか「倒産間近なのではないか」「手続きが面倒」など、ネガティブなイメージを持たれてしまう可能性の方が高いと言えます。

そのため、経済産業省では債権活用の利用拡大のために風評被害を減らすこと・契約の慣例是正を積極的に行っています。
例えば、中小企業庁が売掛債権担保に対し90%保証を約束する「売掛債権担保融資保証制度」を導入したことは環境整備の第一歩と言えるのではないでしょうか。

ファクタリングの潜在的ニーズ

みずほ情報総研のロゴと書類

みずほ総合研究所の調査によると、ファクタリングを利用したくない理由として「資金繰り困難と判断されたくない:30%」「調達コストが高い:25%」と、半数以上がイメージと手数料を理由に利用を控えていることがわかりました。

さらに、仕組みが理解できないと答えたのは3割程度、7割以上はファクタリングを知りながらも利用できていないという結果となっています。
この結果からも経営を潤滑に進めるための真当な手段として潜在的ニーズは高く、業界の風潮が改善されればさらなる拡大が見込めるものと考えます。

元アドバイザーイメージ画像

債権活用の筆頭として挙げられているABL(債権担保融資)ですが、多くの銀行では「300万円から」「1,000万円から」などの制限が設けられており、個人事業主や小企業が利用するには現実的ではありません。
少額債権はファクタリング、担保が確保できるのであればABLといった形での使い分けが今後益々重要になっていくのではないでしょうか。